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入管法について

  • K-Diffusionors
  • 2018年12月9日
  • 読了時間: 4分

外国人材受け入れについて、「入管法」が話題になっています。ついに12月8日未明参議院本会議で可決・成立に至ったのです。


ところで、この略称「入管法」の正式名称を知っているでしょうか? そう、「出入国管理及び難民認定法」です。気付いた方も多いと思いますが、これは難民についての法律でもあります。というのもこれは、通称「難民条約」こと「難民の地位に関する条約」に日本が加入するに当たって改正された過去を持っているのです。


「入管法」は、日本に入国し、又は日本から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とした法律となっています。つまり、難民申請をおこなった者に対する難民認定、「条約難民」とするかどうかはこれに従って行われています。

また、政府はこの「条約難民」に対して保護する義務を負っています。


日本においては、1951年から2017年までの申請数は60674件、うち難民と認定されたものは708件、難民と認定しなかったものの,人道上の配慮を理由に在留を認めたものは2,588件(いずれも速報値)となっています。


以上で示した受け入れに関して、非常に様々な議論が行われています。一般的に議論に登るのは、ほとんどが受け入れることに対する影響について、つまり政治的・経済的・社会的な懸念とそれに対抗する見解です。


しかし、そもそも「他者を迎え入れる」というのは一体どういうことなのでしょうか。

そこで、ここで参考にするのはジャックデリダの『歓待について パリ講義の記録』というものです(学校の授業でも取り上げられました、K・S先生ありがとうございます)。

まず、「歓待 hospitality」という言葉の意味を考えます。これについて詳しい解説は避けますが、もともと古代ローマにおいては、「互酬的な客人を迎え入れること」と捉えられていたそうです。歓待が行われる際の制度において、難民は迎えられる権利を持つのであり、受け入れる側はそのことを念頭において迎え入れなければいけないのです。


次に、二つの歓待の形態というを紹介します。

難民は、制度に該当する者として同定されたときに、権利を持つ者として迎え入れられます。デリダはこのような制度化された歓待を「法的な=権利上の歓待」と呼びました。

逆に、何の条件も考慮せず、相手が誰であろうと迎える歓待を「無条件な歓待」「絶対的な歓待」と呼びます。

ただ、後者は明らかに理念としての歓待です。私たちと異なるエートス・ロゴスを持つ者は主権者にとって自己の境界を揺るがしかねない、挑戦的な存在であるのです。よって、実際に私たちが相手を迎え入れるときには、相手がどのような者であるかを想定しなければいけず、問いかけざるを得ないです。例えば、漂流してきた人に「大丈夫ですか?」と問うことが条件となり、理念に限定を加えていることになります。

こうして、「絶対的な歓待」という理念を少しでも実現されるためには条件付きの歓待「法的な=権利上の歓待」を必要にしています。

では、逆に「絶対的な歓待」は必要なのでしょうか?答えは、yesと考えられます。なぜなら、「法的な=権利上な歓待」の制度は自らの存在理由を得るためにもやはり「絶対的歓待」がなくてはならないからです。

以上のように理念・正義としての「絶対的な歓待」と、制度としての「法的な=権利上の歓待は」互いに異質にして分離不可能という性質がある。このように、歓待には構造的な困難があるのです。


ここまでの話から、歓待するときには、難民に対して私たちは問いかけざるを得ないということがわかります。そうすることで、難民に対する応答可能性を開き、難民からも問われるような、問いかけあう行為が歓待という形をとっているのかもしれないのです。


最後に、デリダが正義と法律について興味深い話をしていましたので紹介します。

「もちろん、いかなる法律も正義に適合することはできないでしょうし、だからこそ法律(ドロウ)の歴史が存在するのであり、だからこそ人間の権利が進展するのであり、だからこそ法制の果てしない確定づけや止まることのない改善可能性が存在するのです。」


今回の入管法についてもよりよい法改正となってほしいものですね。

 
 
 

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